高性能AndroidタブレットのHUAWEI MatePad Proと定番のApple iPad Proを実機で比較してみます。ただしどちらも「Pro」とはいえ、MatePad ProはiPad Air 第4世代よりも安いためAir 4との比較も含めていきます。
iPad Pro 11インチ | 93,280円 |
iPad Air 4 | 69,080円 |
MatePad Pro | 53,300円 |
購入したのはどちらも国内版で、iPad Proは11インチ 2020年モデルです。両方とも発売から半年~1年ほど経過していますが、タブレットの進化はスマホほど速くないですし新製品は価格が高くなることが予想されるので、今から買うのも大いにアリだと思います。
外観
左がMatePad Proで右がiPad Proです。iPad Proの方が正方形に近いことが分かります。

MatePad Proの方がコンパクトですが、横向きで使用する際は縦の表示領域が多いiPad Proの方が使いやすく感じます。重さはほぼ変わりませんが、厚さはiPad Proの方が1mm以上薄くなっています。
本体サイズ(mm) | 重さ | 厚さ | |
MatePad Pro | 246×159 | 465g | 7.2mm |
iPad Pro | 247.6×178.5 | 471g | 5.9mm |
どちらもマットな質感で高級感があります。MatePad Proのカラバリはミッドナイトグレーのみで、紺色のように見えます。iPad Proはスペースグレイを選択。他にシルバーがあります。
カメラはどちらも出っ張っているのでデスク等に平置きするときはケースを着けた方がいいかも。後述しますが、iPad Proの方がレンズの数が多いので目立ちますね。

側面を見るとMatePad Proはよくある滑らかにカーブしたデザインなのに対し、iPad ProはiPhone12でも復活した角ばったデザインです。個人的にはiPad Proの方がデザインはとても好み。

電源ボタンと音量ボタンの配置や、4つのスピーカー、USB Type-C端子は同じです。
ディスプレイ
MatePad ProもiPad Proも有機ELではなく液晶。解像度はほぼ同じでどちらも非常に綺麗です。

画面サイズ(インチ) | 解像度 | リフレッシュレート | |
iPad Pro | 11 | 2,388×1,668 | 120Hz |
iPad Air 4 | 10.9 | 2,360×1,640 | 60Hz |
MatePad Pro | 10.8 | 2,560×1,600 | 60Hz |
視野角はどちらも良好。60Hzと120Hzのリフレッシュレートは体感で差が分かります。iPad Air 4も60Hzなので価格的に仕方ないのですが、ぜひ120Hz対応のMatePad Proも用意してほしいですね。
ベゼルはどちらも四辺が均一ですが、明らかにMatePad Proの方がベゼルが細いことが分かります。iPad Proでも十分細いと思っていましたが、MatePad Proを見てしまうとiPad Proでさえベゼルが太いと感じてしまいます。MatePad Proで「没入感ってこういうことなのか」と実感させられました。

インカメラはiPad Proはベゼル部分にあるのに対しMatePad Proはタブレットとしては珍しいパンチホールを採用。スマホのパンチホールと比べるとかなり大きいですが意外と慣れるのであまり気になりません。16:9の動画を再生するときはちょうど隠れるようになっています。
生体認証
iPad ProはTrueDepthカメラによる3D顔認証「Face ID」のみ。iPhone X以降と同じで、マスクを着けていると解除できないので外で使うときにストレスです。
MatePad Proも顔認証のみですが、Androidでお馴染みのBlueTooth機器を利用したアンロック方法があります。設定した機器が接続されている状態であればロック解除できるという機能で、スムーズにロック解除できます。iPhoneにもApple Watchを利用したロック解除機能が追加されるらしいですが、Apple Watch限定なのはイマイチだと思ってしまいます。

iPad Air 4は側面指紋認証なので、マスク必須のいま外出先で頻繁に使うならAir 4がロック解除という面では最も優れているかも知れません。
充電・バッテリー
iPad Proは有線充電のみ対応で、18Wの充電器が付属しています(実際はもっと速く充電できるようです)。
一方MatePad Proは40Wの高速有線充電(付属の充電器で可能)に加え、なんと15Wのワイヤレス充電にも対応。ただしワイヤレス充電器の接点に合わせるのがスマホより難しくメリットをあまり感じないので、充電速度も速い有線の方が良いかもしれません。
MatePad Proはさらにワイヤレス給電にも対応していて、本体に載せるだけで他のワイヤレス充電対応機器を充電することができます。スマホのワイヤレス給電より使い勝手が良くて便利です。もちろんiPad Proも有線でなら給電できますが、LightningやUSB Type-Cなど様々なケーブルを用意する必要があります。
なお、iPad等ワイヤレス充電非対応の機器でもこのような商品を使えばワイヤレス充電が出来るようです。
バッテリー容量はMatePad Proは約7,250mAhで、iPad Proは非公表ですが7,812mAhと分かっています。容量にほぼ差は無く使っていても電池持ちに差は感じません。タブレットはバッテリー容量が多いのでスマホより電池持ちがよいイメージがありますが、実際はディスプレイが大きくiPad Proの場合はリフレッシュレートが高いのでスマホと同等かやや劣ります。
処理性能
処理性能はA12Zを搭載したiPad Proが圧倒的に高く、AnTuTuベンチマークスコアは約72万点。OSが違うので単純比較はできませんが、Kirin 990を搭載したMatePad Proは約45万点です。RAM(メモリ)容量はiPad Proが(非公式ですが)6GBでMatePad Proも6GB。
どちらもサクサク動き、処理性能に不満を感じたことはありません。なおiPad Air 4はA14 Bionicを搭載しAnTuTuスコア約66万点、RAM4GBです。価格に対するAnTuTuスコアは実はAir 4が一番高い模様。
ストレージ容量
iPad Proは128GB・256GB・512GB・1TBの4段階からストレージ容量を選べますが、MatePad Proは128GBのみ。しかしタブレットは写真を撮らなく、基本はweb上での作業でローカルに保存するとしてもPDFやいくつかのゲームくらいなので、私は全然ストレージ容量を使っていません。
SIMカード
iPadにはセルラーモデルとしてSIMカードを利用できるモデルがありますが、MatePad ProはWiFiモデルのみです。なお下位版のMatePad(無印) 10.4にはSIMフリー版もあります。
筆者はiPad ProもWiFiモデルを選択し、両方ともスマホからのテザリングで問題なく使っています。
OS・操作性
iPad ProはiPad OS(最新は14.4)、MatePad ProはEMUI(最新は11、Android10ベース)を搭載しています。基本的な操作はどちらも大抵のスマホと同じ、iPhoneX以降のようなジェスチャー操作です。MatePad Proは従来のAndroidの3つのボタンによる操作にも変更できます。
それに加えてiPadでは
- 4本指以上の操作 (アプリ切り替えやホーム画面に戻る)
- Apple Pencilで画面下の端からスワイプしてスクリーンショット撮影
- Macと同様のキーボードショートカットやトラックパッド操作
などのように、iPadはジェスチャー操作やショートカットが豊富なのに対してMatePad Proはタブレット独自の操作方法は特になくキーボードショートカットも少なめでトラックパッドのジェスチャーはほぼ非対応。ほとんどスマホのままという印象を受けます。
分かりやすいのがタスク一覧画面で、iPad Proは大きい画面サイズを利用して2列に並んでいるのに対しMatePad Proはスマホと変わらず。
iPad OS 14 EMUI 11
また、Androidはタブレット用に最適化されていないアプリが多いためMatePad Proでは強制的に縦向きになってしまうアプリがいくつも存在します。iPadではそのようなアプリはInstagramやLINEカメラくらいしか思い当たりません。MatePad Proで横向きに対応していてもスマホ表示を引き伸ばしただけのような、タブレット用に使いやすくされていないアプリも多いです。このように操作性やアプリ面はiPadの方が優秀と言えます。
MatePad Proは米国からの制裁によりGMSが利用できません。特にゲームは多くが非対応なのでご注意ください。ゲーム以外であれば意外と使えます。
画面分割
iPadは画面下端からスワイプするとドックが出現し、タップしてアプリを切り替えたりドラッグして画面分割したりフローティングさせたりできます。フローティングウィンドウ(Slide Over)は右端にしまっておけます。

MatePad Proは画面横端からスワイプするとドックが出現。タップしてフローティングウィンドウにしたりドラッグして画面分割したりできます。iPadとほぼ同じ操作。フローティングウィンドウは2個まで起動したりサイズ調整したりすることができます。最小化しておくことも可能。iPadのSlide Overは右端か左端にしか置けないのに対しMatePad Proは自由に位置を決められます。

デスクトップモード
MatePad ProにはHuawei独自のデスクトップモードがあります。パソコンのように多数のアプリを起動しウィンドウのサイズ調整も自由。面白い機能ではありますが、正直なところ実用性はあまり無いと思ってしまいます。

スタイラスペン
MatePad Pro・iPad Proどちらにも別売で純正のスタイラスペンが用意されています。

Apple Pencil
iPad ProとiPad Airでは第2世代のApple Pencilを使います。側面にくっつくので持ち運びやすく、さらに自動で接続・充電もできます。4096段階の筆圧検知やパームリジェクション機能などを搭載し、非常に小さい遅延で筆記できます。スリープ中の画面をペン先でタップしてメモ帳を起動する機能や、ダブルタップしてペン切り替えなどの機能も付いています。

iPad Air 4も同様に使えますが、120Hz対応のiPad Proの方が遅延は小さいと思われます。価格は15,286円、別売の交換用ペン先は4個で2,312円とかなり高いのがネック。(価格は2021/3/19 20:02時点)
M-Pencil
HUAWEIのM-PencilはApple Pencilと非常によく似ていて、外観で違うのは六角形でグレーという点。こちらもMatePad Proの側面にくっつき、自動で接続・充電できます。4096段階の筆圧検知やパームリジェクション機能、スリープ画面からメモ帳起動なども同じ。

Apple Pencilではホームに戻るなどのナビゲーション操作はできませんが、M-Pencilでは可能です。ブラウザなどで画面に近付けるとマウスホバーのようになります。ダブルタップ機能はありません。
9,900円(2021/3/19 20:01時点)とApple Pencilよりも価格が安く、替えのペン先が4つ付属しているのは非常に嬉しいポイント。しかもペン先の硬さが2種類用意されています。
遅延をスローモーションで比較してみました。左がiPad Pro、右がMatePad Proです。iPad Proの方が遅延が小さいことが分かります。
iPad Pro 2020(Apple Pencil 第2世代)とHUAWEI MatePad Pro(M-Pencil)の純正ペンの遅延をスローで比較してみました。
— どろモバ|ガジェットブログ (@doro_moba) March 20, 2021
やはりiPad Proは120Hzというのもあり遅延が凄く小さいですね。 pic.twitter.com/CiBy8fbgsY
動画のように純正メモ帳アプリであればMatePad Proも低遅延なのですが、サードパーティー製アプリでは遅延が大きくなってしまいます。
M-Pencilが使えないということは無いものの、本格的にイラスト用途に使うのであればiPad ProとApple Pencilの組み合わせがオススメです。ノート用に使うとしてもiPadにはGoodNotesというとても優秀なアプリがあり、これを使うためだけでもiPadを選ぶ価値はあると思います。
また、別の記事ではApple Pencilの代わりになる安いiPad用スタイラスペンを紹介しています。
キーボード
どちらもメーカー純正のキーボードケースが用意されています。
iPad Pro・iPad Air 4
純正キーボードケースのSmart Keyboard Folioとトラックパッドが付いたMagic Keyboardがあります。マグネットで簡単に脱着でき、自動で接続・充電。Apple認定品のLogicool Folio Touchを使ったことがあるのですが、OS側でキーボードやトラックパッドに最適化されていて非常に快適に使え、豊富なキーボードショートカットも便利でした。
MatePad Pro

MatePad ProにはSmart Keyboard Folioによく似たSmart Magnetic Keyboardがあります。マグネットで簡単に脱着でき、自動で接続・充電するという点や外観がほぼ同じ。キーボード配列が英語配列(US)のみなのはJIS配列を好む人にとっては欠点。
トラックパッド付きのモデルはありませんが、Androidはトラックパッドやマウスに対応しているため基本的にサードパーティー製のものが使えます。iPadやMacのようなトラックパッドのジェスチャー操作は無いと思われます。
製品同士の連係
Appleは製品同士の連係が優れていることで有名ですが、HUAWEI製品同士でもメモや写真を同期したり簡単に引き継ぎできたりといった基本的なことは可能です。
さらにHUAWEI独自のHUAWEI Shareマルチスクリーンコラボレーションという機能が存在し、対応するHuaweiスマホをMatePad Proに表示させ操作することができます。ドラッグアンドドロップでファイルのやり取りもスムーズにでき、タブレットの大きな画面で写真を編集する際などにとても便利です。純正キーボードがあればNFCでタッチするだけです。

カメラ
アウトカメラ
iPad Pro 2020年モデルは広角+超広角のデュアルカメラとフラッシュに加えLiDARスキャナを搭載しています。4K60fpsにも対応し画質は良好でブログ用の写真にも使える印象。なお夜景モードはありません。
MatePad Proはシングルカメラとフラッシュのみ。正直言って画質は良くないです。撮影中のカメラアプリのブレが大きくて色味が薄め。iPad Air 4はMatePad Proと同じ構成です。
インカメラ
iPad ProよりMatePad Proの方が画角が広め。iPad Proも狭すぎることはなく、ちょうどよく顔が入ります。MatePad Proはアウトカメラ同様色味が薄めです。
その他
スピーカー
どちらも4機のスピーカーを搭載。MatePad Proはharman/kardon監修です。聞き比べましたが、普通の音量で聴くと差は分かりません。しかしiPad Proの方が最大音量は大きく、音が潰れにくい印象。大差は無いので気にする必要は無いと思います。
LiDAR
iPad ProにはiPhone12 Pro同様LiDARスキャナが搭載されていて高精度に空間を読み取ることが出来ます。これを利用して3Dで空間を保存するアプリなどがいくつかありますが、正直まだまだ実用性は低いです。
まとめ
やはりiPadは王道だと感じました。もちろんMatePad Proも決して悪くなく、タブレットとして十分に役立てられます。MatePad Proの方が優れているのはベゼルの細さやワイヤレス充電・給電対応という点などでしょうか。
純正アクセサリーを揃えた場合、上記のようにMatePad Proが圧倒的に安いことが分かります。(本体はそれぞれ最小構成・価格はアマゾン 2021/3/19 22:56時点)
タブレットとして完成されたiPadがあるとどうしても霞んで見えてしまうだけで、比較的安いのに高性能でiPad ProやAir 4のようなデザインのMatePad Proは非常にコスパが良いと感じます。コスパ重視ならこっちですね。特にAmazonではかなり値下がりしています。
ただしペン・キーボードの使いやすさ(ジェスチャー、ショートカット)やアプリの対応状況を考えると、資金に余裕があればiPadを買った方がタブレットとして大いに活用できて良いと思います。つまりコスパ以外では敢えてMatePad Proを買う大きな理由は無いということ。iPadはタブレットの定番だけあって細部までタブレットの大画面に最適化されていると感じますし、Apple Pencilの遅延の少なさやトラックパッドのジェスチャー操作は感動的です。iPad Air 4(64GB)はProより少し安いですが、それほど価格差は大きくないのでどうせ買うならProを買って120Hzを体感してほしいです。
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